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オートファジー

オートファジー(Autophagy)
「自ら(Auto)」を「食べる(Phagy)」という意味を持つ。
1963年にクリスチャン・ド・デューブにより定義された。
オートファジーの仕組み
細胞中に膜が現れ、分解対象となる細胞質成分を包み込んで二重膜構造体の「オートファゴソーム」を形成する。その外膜が液胞膜と融合し、内膜構造体「オートファジックボディ」が液胞内へ。液胞内の分解酵素が内膜を破壊し、内容物も分解される。
以下、わかりやすい説明
生命活動に必要なタンパク質は、DNAに従って合成されている。分子生物学の基本概念となる「セントラルドグマ」だ。
セントラルドグマ:生物遺伝情報では、ゲノムDNA→複製→DNA→転写→RNA→翻訳→タンパク質 の順に情報が伝達されているとする原則
(セントラル=中心、ドグマ=宗教における教義、原理)
人体内では約200 g/dayのタンパク質が作られる。材料のアミノ酸は、食べ物から接種するが、人間が摂取しているのは約70 g/day。
その不足を補うものの一つが、オートファジー
細胞が自らの細胞質成分(合成したタンパク質など)を分解することで、アミノ酸を得る機能である。
1日絶食すると、肝臓の体積は約7割に縮小するが、これは肝臓で生命を維持するためにオートファジーが活発に行われているため。
ゆえに、しばらく食べなくてもすぐに死んでしまうことがないのだ。
約60兆個の細胞で形成される人体。その中では1秒間で、例えば赤血球だけでも300万個が生成と破壊が行われている。
歴史
デューブ博士博士は細胞分画法によりリソソームやペルオキシソームといったオルガネラ(細胞内小器官)を発見。
その後リソソームの持つ加水分解酵素によって同じ細胞内の細胞質成分が分解されている様を確認し、オートファジーを提唱した。
1992年、大隅良典教授は酵母を用いて、オートファジーの全容を光学顕微鏡(肉眼)で観察、電子顕微鏡でその過程を解明。
14の主要な遺伝子「ATG(AuTophaGy)遺伝子」を発見。
大隅栄誉教授は、液胞がリソソーム同様に分解酵素を豊富に含んでいることから、分解する働きを持っていると予測した。「液胞に分解機能があるとすれば、飢餓状態でもっとも活発に働くはず。液胞内での分解を止めれば、何がどう分解されるのかわかるのではないか」と考え、あえて分解酵素が欠損している酵母を用意し、飢餓状態の液胞を観察していた。すると液胞内で、小さな粒々が激しく動き回っているのを確認。それは細胞質成分が液胞内に次々に取り込まれている様子であった。この発見から、電子顕微鏡などを使ってさらに研究を進めていく。オートファジーでは、まず膜が現れて、細胞質成分を包み込み「オートファゴソーム」を形成することや、それを液胞内に取り込んで分解しているという全容を明らかにしていった。