最近、物理世界の生存が脅かされることのない人たちが増えつつある。
毎日特に頑張らなくても餓死することがなく、殺害や事故の危険性がない人々は、物理世界においては生存の危険が存在しない。
そのような人々が次に進むのは、脳内世界だ。
情報世界といってもよい。
そこでは、無限の可能性があり、さまざまな要因で人々を楽しませるとともに、死にいたらせる。
孤独、不安、絶望、格差。
これらは、直接人を殺す力はない、情報だ。
しかし、自らの命を絶たせるのに十分な役割を果たす。
壁を隔ててすぐ隣に隣人がいるにもかかわらず、
「家でひとりぼっちで寂しい」
というのは、情報だ。つまり、脳内における問題にすぎない。
今、食うのに困らないにも関わらず、
「将来、お金がなくなり、食べられなくなるかも」
と心配するのは、頭の中で想像した情報だ。
昨日までと生存の状態は変わらないのにも関わらず、
「彼女に振られて生きる意味がない」
と絶望するのは、情報だ。人の脳内に存在しているだけで、現実には何も変わっていない。
強いて言うならば、二人の人間の会う頻度が減っただけ。
「あいつのほうが俺よりも良い状況だ。にくたらしい。」
これも情報である。
物理的に死の危険性はゼロ。
ここまで見てもわかるように、現代における、物理的死から免れた人々が解決したい問題は、全て情報的なものだ。
では、必要なことは何か。
それは、情報を操り、自らの脳内宇宙を思いのままに生きることである。